先ごろ大変な話題になった、飲食店を星の数で格付けするガイド本、『ミシュランガイド東京2008年』。「本家フランス国内版と比べてお粗末」とか「なぜ、あの店が?」など内容自体は辛口の評価をよく聞いた。
しかし「宣伝効果」は絶大だったようで、「行ってみたいけど予約でいっぱい」という声も、またたくさん聞いた。
現在の飲食店を取り巻く経営状況はきびしいというから、良いことなのだろうと思っていたら、案外そうばかりでもないらしい。私が観たTVでは、選ばれた店のシェフはこう嘆いていた。「多くのお客様にご来店いただいてうれしい。しかし、そのせいで常連さんのご予約をお取り出来ないのは心苦しい」。
このシェフは、ミシュランガイドを見て予約をしてきた客が、再来店してくれるケースは稀であり、その一過性の客にいつもの場所を奪われた「常連客」の足が遠のくことを懸念していた。
通常の飲食店は、客席数や仕入れの食材の量などすぐに増やせるわけもなく、ただやみくもに集客すればよいというものではない。せっかく常連客を育てた、個に対応した「店」のあり方が、このミシュランガイド騒動に巻き込まれたために、あやうくなってきたのだ。
俗に外食産業と呼ばれる大手チェーン店、フランチャイズ店なら薄利多売で大もうけ、となったのだろうが、普通の飲食店ではやみくもに「宣伝する」と逆効果になることもあるようだ。